【まとめ】前倒し認定にあたり、改めて注意したいこと

スペシャル特集

前倒し認定の申請作業が本格化してきました。「どの機種をどれ位認定するか」「認定を多めにすべきか、それとも少なめにすべきか」と、頭を悩ませている方が多いと思われますが、現在の申請件数は都内だけでも約15万台と、当初予定していた3~5倍の規模に達しているようです。全商協では、2017年以降に発売されたパチンコ機の認定申請依頼を極力控える旨の文書を発出するなど、まさにパンクに近い状況にまで至っております。
店舗規模や競合環境、主要客層により、認定に対する考え方や取り組み方はまちまちで、申請件数が多いことも少ないことも決して間違いとは言い切れませんが、やはり「必要のない機種まで認定申請する」という無駄は避けたいものです。

今後の混乱を避ける意味でも、今回と次回の2回に分けて、認定申請で最低限注意しておくべきポイントを今一度確認してみたいと思います。

◆前倒し認定はあくまでも「守り」の策
今回の前倒し認定は、改正規則施行以降、遊技機の出玉性能や魅力の低下に伴う、集客力・収益力の低下を回避し、当面の営業を担保することが主な目的です。そのため、前倒し認定が業績の回復に必ずしも帰結するわけではなく、日々の集客や稼働を維持し、業績を挙げて行くためには、話題機導入、広告宣伝など、これまで通りの仕掛けや施策を常に行なっていかなければなりません。
さらに、この施策は2018~2020年にかけて旧基準機から新基準機へと入れ替えていく際にも、定期的に求められます。前回の規則改正時を踏まえると、今回も移行期間が終了へと近づく2020年に突入して以降、現行基準機から新基準機への本格的な入れ替えが短期間で行なわれると予測されますが、少なくとも、今後3年間は、現行基準→新基準へと入れ替えるための対策と日々の集客や売上を維持していくための対策を別個に考え、両者で独立した予算を確保していった方が良さそうです。

前倒し認定は、あくまでも改正規則施行後の営業基盤を確保するための「守りの施策」で、業績向上や増客のための施策ではありません。このことを念頭に置きつつ、規則改正、日々の営業と2つの概念で対策と予算を編成し、移行期間を乗り切る必要があります。
先ずは間近に控えた年末年始商戦に向け、集客や稼働を底上げていくための対策を認定申請作業と並行していかなければなりません。

◆効率の良い認定申請とは?
認定申請の無駄を避ける上では、上述した様に「営業基盤を確保できる機種」をチョイスしていくことになりますが、その際の判断基準として、「現在、一定水準以上の実績を残しているか」「来年以降も稼働や売上に貢献するか」「来年以降、これの代替となる機種が登場するか否か」「登場する場合にはいつ頃になるか」といった辺りが挙げられます。
その上で、現在、集客や売上に大きく貢献し、かつ将来的に代わりとなるものが登場しない機種を前倒し認定の最優先候補とする必要があり、ある意味、「現在の実績」と「将来性」の両方を見極めていかなければならないでしょう。
このうち「将来性」に言及しますと、来年2月以降は確かに、現行基準で適合したストック分も含めた新機種のリリース数が全体的に減少する中、新基準機の魅力不足が露呈され、現行基準機の価値や中古相場が相対的に高まると予測されます。一方、認定を受けることは中古相場での資産価値を失ってしまうことにもなりますので、結果的に、ある特定の機種でプレミアム的な中古価格を記録しているにも関わらず、認定を受けたばかりに転売できない事態にも陥ってしまいます。認定機種を選定するにあたり、先ずは2021年1月まで設置・運営していくメリットと途中で転売するメリットの双方を比較し、どちらが自店にとってより効果的かを検証していった方が良いでしょう。

当然ながら、全ての現行基準機の価値や中古相場が上がるとは限りません。中古導入で現行基準機を揃えていく際には、集客ターゲットが明確な機種、過去に実績を残したシリーズ機など、きちんと固定客化の見込める機種を優先的にチョイスしなければ、導入メリットそのものが薄れてしまう点にも注意する必要があります。

また、改正規則の内容を振り返りますと、「ジャグラー」ですら出玉性能の低下を余儀なくされるパチスロに対し、パチンコは一定の出玉性能と射幸性レベルが確保され、決して致命的になるわけではありません。さらに現在、主軸機として活躍しているパチンコ機の多くは2020年まで検定期間が残されており、認定を受けなくても現状維持はほぼ可能です。
今後3年間、新機種不足が慢性的に続くとも想定できず、パチンコに関しては、これらのプラス材料も加味しつつ、認定を受ける機種を厳選しても良いかもしれません。

各遊商協によると、現在の認定申請数は1日で許容できる範囲を大幅に超え、書類発給が大幅に遅延すると言われております。是非とも混乱は避けたいところです。

◆中古導入からの認定申請
9月に「前倒し認定」の概要が発表されて以降、中古機相場が高騰し、取引価格が100万円を越える機種も複数確認される様になりました。この中には、これまで長期的な稼働に貢献し、かつ検定期間が残り1年未満となった人気タイトルもあり、この価格もある程度納得できます。
ただ、これらの人気機種は、既に競合店舗間での位置付け(=ランキング)や商圏内でのパワーバランスがある程度決定しているため、中古機購入→増台→前倒し認定の作業を行なったとしても、増客や業績アップへと繋がるとは言えません。仮にこのパワーバランスを変えるとした場合、プレイヤーへの還元など、更なる予算が必要となり、総合的に営業にプラスになるかについては、疑問が残ります。
中古機相場の高騰は当面治まる様子もなく、費用対効果を考慮すれば、人気機種の増台で成果を挙げられる店舗は大型店や強豪店に限られます。人気の定番機を揃えても競合環境に変化は起きないことを踏まえ、同じ投資を行なうのであれば、今後登場する新機種で集客するなど、異なる策を見出した方が良さそうです。

◆「海物語」シリーズの一時的な設置シェア上昇
今回、前倒し認定に関する申請作業が行なわれるのとほぼ同じタイミングで、「CR大海物語4」が発表されました。詳細は不明ですが、本機種も「沖海4」に匹敵する台数規模での導入が予定されています。
一方、現在の「海物語」の主軸である「沖海4」については、認定の対象としている店舗が多いかと思われますが、認定を受ける際には、認定日(来年1月末日)まで設置していなければなりません。その結果、新台として導入された「大海4」と申請のために確保している「沖海4」による「海」シェアの全体的な上昇が起こり、これまで、長年に渡って圧縮に努めてきた「海物語」コーナーの設置バランスが崩れる恐れも起こります。
設置シェアの上昇と共に「海ユーザー」も増加すれば全く問題ないのですが、「沖海」シリーズとは異なり、「大海」シリーズは、他機種への回遊が少ない、熱心な海ファンが主要客層を占めていることもあり、「海ユーザー」の全体的な増加に繋がるとは言えません。恐らく、今回も「海コーナー」内でのファンの行き来が中心となり、「海物語」の全体的な客数に劇的な変化は起こらないと予測されます。
そう考えると、「沖海4」を全て撤去することは避けたとしても、認定を目的とした「海」のシェア拡大は最小限に止めるべきで、認定を受けるタイトルをある程度厳選することが重要です。その意味では、「沖海4」についても、半数近く減台した上で、認定を受けた方が効果的かもしれません。
「沖海4」は仮に認定を受けなかったとしても、2019年8月まで設置することができます。さらに「海物語」シリーズについては、メーカーサイドでも対策がきちんと行なわれており、その時期に合わせて、代替機が登場する可能性もあります。
現在の主軸である「沖海4」であっても、認定を最優先にパワーバランスを崩してしまうことは避けたいところです。

◆最後に
前倒し認定の留意ポイントを紹介してきました。ここで改めて、ポイントをまとめたいと思います。

① 前倒し認定は、あくまでも来年以降の営業を担保するための「守り」の施策。
従来通り、日々の集客や稼働を維持する施策は常に行なっていかなければならず、そのための予算を別個に確保しなくてはならない。
② 無駄な認定を避ける上で、機種毎の「現在の実績」と「将来性」の2つを検証すべき。
特に「将来性」については、2021年まで使っていくメリットと中古転売するメリットを比較し、最善策を決定すべき。
③ パチンコとパチスロの認定は別物。
パチンコについては、一定の性能が確保され、認定を受けないことが必ずしも機会損失とはならない。認定に走ってしまうことはNG。
④ 人気の中古機を取り揃えても競合環境に大きな変化は起きない。
中古機相場の高騰もあり、非効率的な部分も多い。導入する際には明確な目的を持つべき。
⑤ 「海物語」の一時的なシェア拡大に注意。
「大海4」の新台導入と「沖海4」の認定申請がバッティングするが、「海ユーザー」の増加に繋がるわけではなく、設置シェアのコントロールが重要。

昨年認定を受けず、みなし機扱いとなっていたパチスロの主力機が前倒し認定できない(=撤去しなければならない)事態となってしまったことにより、現在、将来的な保険として、より多くの機種を認定申請したいという風潮にありますが、認定を受けることは、「2021年1月までの設置・運営を担保する代わりに、中古転売ができない」という一長一短を抱えております。
今回検証する限り、特にパチンコについては、認定を受けないことが必ずしも不利益になるとは言えず、前倒し認定のメリットとデメリット、認定で享受できる恩恵、認定を受けなった場合の対策、今後登場する新基準機の性能などを踏まえ、認定の取捨選択を行なった方が良いかもしれません。また、認定作業と日々の営業は別物であり、集客や稼働を維持していくための策も同時に考えていく必要があるでしょう。

※ 当サイトで使用しているホールや機械の画像はすべて許可を取り撮影し、掲載しております。

この記事の著者

石野 晃
株式会社 矢野経済研究所
サービス産業事業部 上級研究員
2000年、(株)矢野経済研究所に入社。翌年より会員向け情報誌「パチンコパチスロ新機種情報」の編集業務に携わり、パチンコを中心とした機種分析を本格的開始。以降、アンケート調査業務や遊技機メーカーへの開発支援業務などを通じ、業界に様々な意見を進言している。
株式会社 矢野経済研究所
石野 晃
株式会社 矢野経済研究所
サービス産業事業部 上級研究員
2000年、(株)矢野経済研究所に入社。翌年より会員向け情報誌「パチンコパチスロ新機種情報」の編集業務に携わり、パチンコを中心とした機種分析を本格的開始。以降、アンケート調査業務や遊技機メーカーへの開発支援業務などを通じ、業界に様々な意見を進言している。
株式会社 矢野経済研究所